壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

変な家  雨穴

変な家  雨穴

飛鳥新社  電子書籍

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高齢者でも動画をよく見る。引っ越しの予定はないが,面白い間取りの家の内覧をする「○○不動産」なんていう動画を見る。ミステリでもホラーでも家や間取りの謎は魅力的だ。この動画がおもしろいと教えてもらい,さらに本を買ってしまった。いくつになっても野次馬根性が抜けない。

『変な家』はドキュメンタリー風のホラーだ。事件や怪異はないが違和感のある間取りに妄想をふくらませただけで動画は終わるのだが,その先が本になっている。ホラー(怪談)というのは怪異の事実が怖いのではなく,その語り方が怖いのだといつも思う。「語り」は音声だけでなく文章も映像も含むが,情報をどういう順序でどういう言葉で伝えていくのか,というのが恐怖をあおるうえで重要なのだろう。家の中の隠し部屋とか仏壇とか面白い要素がたくさんあったので,もっと小出しに詳細に語ってくれたらもっと面白くて怖いものになったと思う。稲川さんの語る話を,そのままNHKアナウンサーがニュースのように読んだら怖くないはずだ。

肝心なことを忘れていた。私は怖いホラーは苦手だった。だからちょうどいいのかもしれない。『残穢』(小野不由美)もドキュメンタリー風ホラーだが,怖くて眠れなかった。