壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ミツバチと文明 クレア・プレストン

ミツバチと文明 クレア・プレストン

草思社  倉橋俊介訳  図書館本

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ミツバチと人類がどう関わってきたのか,人間がミツバチにどんなイメージを持ってきたのか,ミツバチが人類の歴史にどんな役割を果たしてきたのか(または,どんな役割を演じさせられてきたのか)を,宗教,文学,政治などいろいろな面から論じた本です。ただ,著者の専門は英文学であるためでしょう,文学とのかかわりに関する記述が圧倒的に多く,扱うミツバチも西洋ミツバチに限定されているので,『セイヨウミツバチと西洋文明』ととらえて読みました。

ミツバチは有史以前から人類と付き合いがあったけれど,品種改良などはほとんど行われず,ミツバチはずっとミツバチのままでした。時代と共に変わっていったのは人間のほうです。ミツバチはハチミツ生産者として,花粉媒介者として便利に利用されていますが,のみならず宗教,政治,芸術などにおいて,時代の要請に応じて,何かの象徴として,寓意として,そして,環境問題の旗印としてとらえられてきました。

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わが家の小さな庭にあるボリジ(ハーブ)はミツバチたちに大人気です。天気の良い日は毎日ほぼ2匹のミツバチが蜜を採取しています。写真はうまく取れませんでしたが,多分これはセイヨウミツバチでしょう。近くには大規模なイチゴ温室があるので,そこからやってきたのかな。丸っこくて小さくてモフモフシマシマで,ミツバチの見た目がこれほど可愛くなかったら,昆虫がいったん摂取して吐き戻したものを食べようとは思えません。

シャーロック・ホームズは引退後に養蜂家になったそうです。恩田陸蜜蜂と遠雷』の風間塵の父親も養蜂家でしたよね。

ミツバチが地球上から消えたらどうなるかというディストピア小説があるそうで,図書館から借りてきました。『ミツバチ』(マヤ・ルンデ)。読みたい本がたくさんあるし,時間もあるのに,高齢になると本がたくさん読めなくなるんです,悲しい。

 

以下はメモ。

1.ミツバチと人類

野生のチンパンジーがはちみつを餌にしているので,人類も有史以前から工夫してハチミツを採取していたのはたしかだが,養蜂が始まったのもずいぶんと早い時期で,紀元前3世紀にはエジプトで高度な養蜂がおこなわれていたという。ミイラの防腐剤としてハチミツが使われ,副葬品が蜜蝋で作られていた。

2.ミツバチ,その驚くべき生態

生物としてのミツバチの話はあっさりしているが,挿入図はほとんど本の挿絵から引用されていて面白い。

3.養蜂の人類史

ミツバチは人間の家畜というより,人間と共生する生物ととらえたほうがいいかもしれない。養蜂家の仕事は飼育というより放牧に近い。現在セイヨウミツバチに使われている巣箱は19世紀の半ばに発明されたもので,生産量が一気に上がったという。

4.政治的イメージの源

ハチミツ生産をして社会生活を営むミツバチは,勤勉・倹約・清潔・従順な者たちの道徳観の象徴であった。清教徒的,ハチミツを作る奴隷としての地位,飼い主から独立した自由なもの,革命家,など。なんと人間の勝手なことか!

5.敬虔と堕落の間

キリスト教におけるミツバチの位置は,神聖で潔白で貞淑(交尾しないから)。蜜蝋のろうそくは儀式に欠かせなかった。また動物の死体から生ずると信じられ,ノアの箱舟には乗せてもらえなかった。

6.ミツバチの経済

ハチミツや蜜蝋の価値は高い。かつては食糧ばかりか,薬,防腐剤など,非常に多くのものがミツバチに由来していた。現代では経済的価値が高いのは花粉媒介である。

7.アートにおけるミツバチ

六角形の巣房の完璧さは,ガウディやコルビジェに影響を与えた。ミツバチはダンスをして歌をうたう。(動物行動学としてのダンスがアートに分類されていて面白い)

8.伝承の中のミツバチ

神話とか,迷信とか,キリスト教以外の宗教的メッセージがここに分類されているw。

9.歌うミツバチ,刺すミツバチ

大衆文化の中で踊って歌うミツバチたち。マンガ,アニメ。ミツバチマーヤには原作があったのね。

10.「悪しきミツバチ」誕生と近現代

ホラー映画とか,パニック映画とか,テレビとか。アフリカミツバチとの交雑で狂暴化?

11.消えゆくミツバチ

この本の初版が書かれたのは2005年で,2006年からの蜂群崩壊症候群については,2019年に改訂されている。蜂群崩壊症候群の真の原因はいまだ確定できない。