壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

読書

無花果の実のなるころに 西條奈加

無花果の実のなるころに (お蔦さんの神楽坂日記) 西條奈加 Audible 西條さんの人気シリーズの一冊目をオーディオブックで楽しく聴きました。ナレーションが巧みでセリフの区別がつきやすく、アニメや吹替えドラマを見ているみたいです。ベテランの声優さんの…

田舎のポルシェ  篠田節子

田舎のポルシェ 篠田節子 文藝春秋 図書館本 田舎には住んでいるが軽トラをもっていないので、「田舎のポルシェ」の事は知らなかった。『ハヤブサ消防団』でスバル製の軽トラの型式をそう呼ぶのだと聞いた直後に、移動図書館の本棚で本書を見つけた。何かの…

ああ、ウィリアム!  エリザベス・ストラウト

ああ、ウィリアム! エリザベス・ストラウト 小川高義訳 早川書房 図書館本 作家であるルーシー・バートンは二番目の夫を亡くしたが、前夫ウィリアムとの友人関係はそのままだ。ウィリアムの亡き母キャサリンの秘密を知ったウィリアムは、母の故郷であるメイ…

ある男  平野啓一郎

ある男 平野啓一郎 Audible 耳からの読書ではあるが、初読みの平野啓一郎作品。夫を亡くした女性から相談を受けた弁護士の城戸の目線で物語が進行していく。事故死した夫の死後に、夫が全くの別人であることが判明し、誰と結婚していたのかと戸惑う女性から…

人間の彼方  ユーリ・ツェー

人間の彼方 ユーリ・ツェー 酒寄進一訳 東宣出版 図書館本 ロックダウン下のドイツでベストセラーになった小説。コロナは背景であり、書かれているのは人間そのものです。日常が姿を変えたときに人間の本質があぶりだされていくというのが,パンデミック小説…

きたきた捕物帖 / 子宝舟  宮部みゆき

きたきた捕物帖 子宝舟 きたきた捕物帖2 PHP研究所 図書館本 宮部みゆきの時代物には依存性があるようです。昨年末に読んだ『ばんば憑き』に続き、新しいシリーズの捕物帖を読み始めました。 主人公の北一は気弱な一六歳。三歳の時に迷子になって千吉親分に…

火星にいった3人の宇宙飛行士  ウンベルト・エーコ

火星にいった3人の宇宙飛行士 ウンベルト・エーコ E・カルミ 絵 海都洋子訳 六曜社 図書館本 火星を舞台にしたSF小説は1960年代前後にたくさん出ています。前回読んだ『火星のタイム・スリップ』は1964年でした。この時代、ウンベルト・エーコさえ、火星に行…

火星のタイム・スリップ  フィリップ・K・ディック

火星のタイム・スリップ フィリップ・K・ディック 小尾芙佐訳 早川書房 電子書籍 火星の話をたくさん読んできたが、今世紀に近くなると、多くはテラフォーミングされた火星に集団移住している。しかし1980年代以前の火星は、薄い空気があって呼吸ができ、原…

可燃物  米澤穂信

可燃物 米澤穂信 文藝春秋 Audible お試し期間のAudible で聴いた8時間30分。活字で読めば半分以下の時間で読めるだろう。先が早く知りたくてKindleを探したが、まだ高いのであきらめて耳から聞いた。2倍速という手もあるが、耳からの情報処理能力が低いの…

ハヤブサ消防団  池井戸潤

ハヤブサ消防団 池井戸潤 集英社 Audible 初の池井戸潤で、初のAudible 。朗読がとても上手だったのと、会話文が多くて、耳からの情報が理解しやすかったため、最後まで聴き終えることができた。そして何よりも面白かったのが、都会の者が初めて田舎で暮らす…

稚児桜  澤田瞳子

稚児桜 能楽ものがたり 澤田瞳子 淡交社 図書館本 能楽を下敷きにした八編の物語。テレビでしか能を見たことが無い(それも何回か)ので、能の原曲との関連を推し量る事さえできない。あらすじをネットhttps://noh-sup.hinoki-shoten.co.jp/で確かめただけだ…

我らが少女A   髙村薫

我らが少女A 髙村薫 毎日新聞出版 図書館本 12年前に未解決となっていた殺人事件が、一人の女の死をきっかけに動き出した。合田雄一郎シリーズの六作目の舞台は、野川公園を囲む狭い地域で、登場人物もごく少ない。12年前の殺人事件の捜査に参加していた合田…

ばんば憑き  宮部みゆき

ばんば憑き 宮部みゆき 角川書店 図書館本 移動図書館の棚で見つけた短編集。宮部みゆきの時代物を読むのは十数年ぶりです。不思議でほんのり怖くて面白い六篇。宮部さんの描く子供たちに心惹かれます。 「坊主の壺」 江戸も終わりの頃、コロリで親兄弟を亡…

ハイランド・クリスマス / ゴシップ屋の死  M・C・ビートン

ハイランド・クリスマス M・C・ビートン ゴシップ屋の死 マクベス巡査シリーズ1 M・C・ビートン 松井光代訳 文芸社 Kindle unlimited クリスマスまでに読み切れなかった『ハイランド・クリスマス』は英国のベストセラー作家によるコージーミステリです。ハイ…

月と日の后  沖方 丁

月と日の后 沖方 丁 PHP研究所 図書館本 移動図書館の棚で見つけた本。平安時代、藤原道長の娘として12歳で入内した彰子の、史実に沿った成長物語です。紫式部の登場はわずかですが、来年の大河ドラマの予習にピッタリじゃないですか。 父・道長に云われるま…

ラストマイル  デイヴィッド・バルダッチ

完全記憶探偵 エイモス・デッカー ラストマイル 上/下 デイヴィッド・バルダッチ 関麻衣子訳 竹書房文庫 Kindle unlimited 完全記憶探偵エイモス・デッカーの二作目。脳障害により完全記憶を持ったエイモス・デッカーは、第一作目で自身の家族を殺害された…

自転しながら公転する  山本文緒

自転しながら公転する 山本文緒 新潮文庫 Kindle unlimited 三十代前後の女性にとって、人生の選択の時期でもあり、仕事/恋愛/結婚/家事/育児と目の回るような時期です。それを「自転しながら公転する」というのは、言い得て妙です。私にとってはもう大…

穢れた風  ネレ・ノイハウス

穢れた風 ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 月一回、オリヴァー&ピア・シリーズの5冊目は、風力発電に絡んだ利権争いを背景に起きた殺人事件。ドイツでは、海岸地方や洋上の風力発電が主力なのでしょう、本書の舞台のような内陸の山地にタービンを…

クララとお日さま  カズオ・イシグロ

クララとお日さま カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 早川書房 図書館本 移動図書館の本棚で見つけた。出版から二年近くたって、ようやく読むチャンスができた。その間、《ノーベル文学賞 受賞第一作 カズオ・イシグロ最新作、2021年3月2日(火)世界同時発売! AIロ…

さよならの儀式  宮部みゆき

さよならの儀式 宮部みゆき 河出書房新社 図書館本 表紙に8 Science Fictions Stories とあります。宮部みゆきのSF短編集。SFとはいえハードなものではなく、どこかで出会った懐かしい感じの、(S)少し(F)不思議な物語でした。人の心の奥底を書いているの…

四人組がいた。  髙村 薫

四人組がいた。 髙村 薫 文藝春秋 図書館本 髙村さんの本を久しく読んでいなかった。寡作で、図書館の予約でいっぱいの人気の新刊は借りる気になれず電子化もされていない。この頃は、遠い図書館に行くのが億劫になっている。だから今世紀に入ってからは全く…

無貌の神   恒川光太郎

無貌の神 恒川光太郎 角川文庫 Kindle unlimited 読み放題で見つけた、バラエティに富んだ六編の短編集。恒川さんの短編は、確かな語り口が読者を一気にその世界に引き込みます。映像が湧き上がってくるような筆致です。〈捕われたもの〉という一貫したテー…

青い壷  有吉佐和子

青い壷 有吉佐和子 文春文庫 電子書籍 50年近く前に書かれた小説なのに、なぜかとても面白い。ドラマ「大奥」→「皇女和宮」→「有吉佐和子」という連想でセール中の本書を読み始めたのだが、復刊後にベストセラー本になったというネット記事が出ていた。さも…

地下鉄道  コルソン・ホワイトヘッド

地下鉄道 コルソン・ホワイトヘッド 谷崎由依訳 ハヤカワepi文庫 電子書籍 南北戦争の少し前、ジョージアの農園で生まれた黒人少女コーラは、北部への逃亡を決めました。サウスカロライナ、ノースカロライナ、テネシー、インディアナを通り、自由州である北…

完全記憶探偵  デイヴィッド・バルダッチ

完全記憶探偵 デイヴィッド・バルダッチ 関麻衣子訳 竹書房文庫 上下合本版 Kindle unlimited 『火星の人類学者』では驚異的な記憶力を持つ人々が取り上げられていました。そのような超記憶症候群の探偵が主人公のアメリカンミステリーです。ドラマを見てい…

火星の人類学者  オリヴァー・サックス

火星の人類学者 --脳神経科医と7人の奇妙な患者-- オリヴァー・サックス 吉田利子訳 ハヤカワ文庫NF 電子書籍 人生の終わりに近づき、何回目かの蔵書整理をしています。残り少ない紙の本に決別し、どうしても捨てられない本だけ電子書籍に買い直そうかとも考…

心淋し川  西條奈加

心淋し川 西條奈加 集英社文庫 電子書籍 連作短編の時代小説。5編の短編と1編の中編という構成だ。読み終えて半村良の『どぶどろ』を連想した。5編の短編では、古びた貧しい長屋に住む人たちの暮らしを描いている。独立した短編としても成立する。最後の中編…

白雪姫には死んでもらう  ネレ・ノイハウス

白雪姫には死んでもらう ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 ドイツミステリ、オリヴァー&ピア・シリーズの四作目は、さらに厚くなって文庫本570頁。題名もキャッチ―だが、これは原題Schneewittchen muss sterbenに近い。 11年前の少女連続行方不明…

飛族  村田喜代子

飛族 村田喜代子 文春文庫 電子書籍 『蕨野行』でも『エリザベスの友達』でもそうだったが、村田さんの描く婆さんたちの魅力的なこと! 生死の境を軽々と乗り越えて、身体は動かなくなりつつも、海と空を自由に羽ばたくような精神を持っている。面白くて、わ…

脳はなにを見ているのか   藤田 一郎

脳はなにを見ているのか 藤田 一郎 角川ソフィア文庫 電子書籍 15年ほど前に書かれた本だがわかりやすい(六割引きで安かった)。目で見たものが脳で処理されて、初めて「見えた」と知覚する。カメラに写し取られた映像とは異なり、私たちが「見ている」映像…