壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

死んでも治らない 若竹七海

死んでも治らない 大道寺圭の事件簿 若竹七海 光文社カッパノベルズ 2002年 800円 元警官の大道寺圭が初めて書いた本が「死んでも治らない」。おバカな犯罪者たちの間抜けな失敗談を紹介したところ、間抜けな犯罪者たちが次々と大道寺に近づいて彼を利用しよ…

あのころはフリードリヒがいた ハンス・ペーター・リヒター

あのころはフリードリヒがいた ハンス・ペーター・リヒター 上田 真而子訳 岩波少年文庫 1977年 570円 グラスを読みながら、この本を思い出して物置から出してきました。つい、読み始めてしまいました。 「ぼく」とフリードリヒは、同じアパートに住んでいて…

玉ねぎの皮をむきながら ギュンター・グラス

玉ねぎの皮をむきながら ギュンター・グラス 依岡隆児訳 集英社 2008年 2500円 「蟹の横歩き」のようにつづられた話は読むのがひどくもどかしかったのですが、今度は玉ねぎの皮をむくように語られるグラスの個人史もまた、すんなりと読むことができませんで…

終わりの街の終わり ケヴィン ブロックマイヤー

終わりの街の終わり ケヴィン ブロックマイヤー 金子ゆき子訳 ランダムハウス講談社 2008年 2400円 アフリカにある多くの社会では、人間を三種類に分類している――地上でまだ生きている人間とサーシャとザマニに。死んだばかりの人たちは、地上の人々と時間が…

石油! アプトン・シンクレア

石油! アプトン・シンクレア高津正道/ポール・ケート訳 平凡社 2008年 2400円 なぜ今頃、アプトン・シンクレアの新刊が?・・・・映画の原作だからでした。シンクレアは昭和二十年代のはやりだったそうで、子どものころ、家の本棚に「世界の終わり」や「地…

蟹の横歩き ヴィルヘルム・グストロフ号事件 ギュンター・グラス

蟹の横歩き ヴィルヘルム・グストロフ号事件 ギュンター・グラス 池内 紀訳 集英社 2003年 2100円 野次馬的興味でギュンター・グラスの自伝を読み始めて、それ以外の作品をひとつも読んでいないことに多少の後ろめたさを覚え、池内紀さんの訳で「蟹の横歩き…

谷中、花と墓地 エドワード G.  サイデンステッカー

谷中、花と墓地 エドワード G. サイデンステッカー みすず書房 2008年 2400円 昨年亡くなられた日本文学の研究者サイデンステッカー氏の日本語による34編のエッセーです。一年の二、三ヶ月を湯島で暮らし、日本の庶民の文化をこよなく愛した氏は、湯島天神の…

知られざる宇宙―海の中のタイムトラベル フランク・シェッツィング

知られざる宇宙―海の中のタイムトラベル フランク・シェッツィング 鹿沼博史訳 大月書店 2007年 3990円 深海にあこがれたのは、やはりノーチラス号に乗ったころからでしょうか。それとも海の中に親近感を持つのは、やはり人間が海棲哺乳類から進化したからで…

猫島ハウスの騒動 若竹七海

猫島ハウスの騒動 若竹七海 光文社カッパノベルズ 2006年 900円 葉崎市シリーズ第三作です(すっかりハマってしまった)。干潮のときだけ本土とつながる猫島は、猫島神社があるだけの小さな島です。住民は全部で三十人にも満たないのですが、ある雑誌で猫の…

ヴィラ・マグノリアの殺人 若竹七海

ヴィラ・マグノリアの殺人 若竹七海 光文社カッパノベルズ 1999年 880円 古書店アゼリアの死体のシリーズ第一作。コージー・ミステリは後を引きますね。コージーな雰囲気なのに甘いだけじゃない、ほろ苦さも加わって癖になりそうな美味しさです。 葉崎市のは…

山魔の如き嗤うもの 三津田 信三

山魔の如き嗤うもの 三津田 信三 原書房 2008年 1900円 山深い地方の旧家、忌み山、成人参りの儀式、一家消失、金鉱、山の魔物に関する伝承、一軒家と森による二重密室、六地蔵の数え歌による見立て、連続殺人。 禍々しい道具立てと本格推理を充分に楽しみま…

エヴリブレス 瀬名秀明

エヴリブレス 瀬名秀明 TOKYO FM出版 2008年 1600円 証券会社で数理解析の専門家として働く杏子は、高校時代に好きだったトシオ先輩(洋平)に再会します。文化祭の夜に、二人で見た不思議な町の風景が最後の思い出でした。永遠の愛とは何かという純愛物語で…

工学部・水柿助教授の解脱  森 博嗣

工学部・水柿助教授の解脱 森 博嗣幻冬舎 2008年 1600円 三冊目のこのシリーズもこれで終わりなんでしょうか。工学部助教授ではなくなった水柿君の不思議な日常は相も変わらず。小説ともエッセーともつかない虚実取り混ぜた不思議な作品ですが、軽妙や軽快と…

家族の昭和 関川夏央

家族の昭和 関川夏央 新潮社 2008年 1500円 関川さんの昭和は私自身の昭和とほぼ重なります。「砂のように眠る」で読んだ昭和は、懐かしくも身につまされるものでした。-むかし「戦後」という時代があった-という副題のように、戦後の昭和を扱い、ベストセ…

すべての終わりの始まり キャロル・エムシュウィラー

すべての終わりの始まり キャロル・エムシュウィラー 畔柳和代訳 国書刊行会(短篇小説の快楽)2008年 2300円 国書刊行会の短編集が続きました。キャロル・エムシュウィラーは1921年生。御歳87で現役のSF作家らしい。既刊の五冊の短編集から抜粋された日本初…

限りなき夏 クリストファー・プリースト

限りなき夏 クリストファー・プリースト 古沢嘉通編訳 国書刊行会(未来の文学第Ⅱ期)2008年 2400円 デビュー作から近作まで、日本オリジナル短編集です。プリーストも五冊目になると、その叙述トリックに如何にうまく引っかかろうかと、注意深く読みました…

焼かれる前に語れ 岩瀬博太郎 柳原三佳

焼かれる前に語れ 岩瀬博太郎 柳原三佳 WAVE出版 2007年 1500円 『司法解剖医が聴いた、哀しき「遺体の声」』という副題で、海堂尊「死因不明社会」の文献に挙がっていたものです。趣旨は同じように、日本は変死に対して解剖率が低く、検死システムそのもの…

排出する都市パリ アルフレッド・フランクラン

排出する都市パリ アルフレッド・フランクラン 高橋清徳訳 悠書館 2007年 2200円 「泥・ごみ・汚臭と疫病の時代」という副題がありまして、『匂い』シリーズ(*下記)はとうとう『臭い』に行き着きました(笑)。「感染地図」で見たロンドンの下水事情からの…

ムギと王さま 本の小べや1 ファージョン

ムギと王さま 本の小べや1 ファージョン 石井桃子訳 岩波少年文庫 2001年 720円 「ムギと王さま」は、小学生の時に読んだ本です。1960年代の初めに刊行された岩波少年少女文学全集に入っていて、初めて『文学の香り』をかいだ、非常に思い出深い本です。2001…

トムは真夜中の庭で フィリパ・ピアス

トムは真夜中の庭で フィリパ・ピアス高杉一郎訳 岩波少年文庫 1975年 670円 「まぼろしのすむ館」から連想して再読しました。最初に読んだのは約20年前です。娘たちのためと称して、岩波少年文庫を大人買いしたことがあります。もちろん私が、こっそり、真…

まぼろしのすむ館 アイリーン・ダンロップ

まぼろしのすむ館 アイリーン・ダンロップ 中川千尋訳 福武書店 1990年 1400円 図書館の長期休館で、まとめて借りた本はまだ6冊残っていますが、手軽に読める本から消化してしまいました。残りは厚い本ばかりで、今日は手をつけたくない感じです。何かないか…