壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

百年の誤読

百年の誤読 岡野 宏文, 豊崎 由美 ぴあ 2004年 1600円 「百年の誤読:世界文学編」もでるらしいとの噂を聞き、まずは、前から気になっていたこの本を読もうと思いまして。謂わば、仮想本棚の積読本です。「文学賞メッタ斬り」のほうは最近の受賞作品を読んで…

モンスーンあるいは白いトラ

モンスーンあるいは白いトラ クラウス・コルドン 大川温子訳 理論社 1999年 2800円 「ベルリン三部作」以外にもコルドンの本はたくさん翻訳されていました。期待している新刊を待つ間にと読み始めたら、素晴らしい本でした。インドで暮らすゴプーとバプティ…

青の歴史

青の歴史 ミシェル・パストゥロー 松村恵理、松村剛訳 筑摩書房 2005年 4300円 ユルスナールの「青の物語」以来、青をめぐる物語を探していましたが、面白そうな本を Webcat Plusの連想検索で見つけました。ミシェル・パストゥローはフランスの歴史家。紋章…

箱舟の航海日誌

箱舟の航海日誌 ウォーカー 安達まみ訳 光文社古典新訳文庫 2007年 552円 図書館の新刊コーナーで見つけた未知の本でしたが、ちかごろ話題になっている「光文社古典新訳文庫」なので読んでみました。ケネス・マクファーレィン・ウォーカーはイギリスの医者に…

倒立する塔の殺人

倒立する塔の殺人 皆川博子 理論社 ミステリYA! 2007年 1300円 コルドンの「転換期三部作」が理論社からYAとして出版されていたという、理論社つながりで手に取りました。 戦時中のミッションスクール。図書館の本にまぎれて、ひっそりと置かれた美しい…

ベルリン1945

ベルリン1945 クラウス・コルドン 酒寄進一訳 理論社 2006年 2500円 前作「ベルリン1933」の最後で、生まれたばかりのエンネをのこして、両親のヘレとユッタは逮捕されました。「転換期三部作」最終巻の舞台は1945年、第二次大戦末期のベルリンです。心配し…

ベルリン1933

ベルリン1933 クラウス・コルドン 酒寄進一訳 理論社 2006年 2500円 「ベルリン1919」の続編。1943年東ベルリン生まれの作家コルドンの「転換期三部作」の二作目です。政治的な混乱に乗じたナチの台頭を舞台に、ヘレ少年の弟ハンスの日常が描かれています。 …

父のトランク ノーベル文学賞受賞講演

父のトランク ノーベル文学賞受賞講演 オルハン・パムク 和久井路子訳 藤原書店 2007年 1800円 「イスタンブール」で取っ付きの悪い思いをしたオルハン・パムクの、小説の方は後回しにして、講演集と対談を読んでみました。直訳風の独特な訳文は、講演の同時…

掠奪都市の黄金

掠奪都市の黄金 フィリップ・リーヴ 安野玲 訳 創元SF文庫 2007年 「移動都市」の続編です。文明崩壊後の地球では、移動する都市は掠奪を繰り返し、反移動都市同盟と闘争を続けています。移動都市ロンドンの見習い史学士だったトムは、顔に傷のある少女へス…

眠れない一族 食人の痕跡と殺人タンパクの謎

眠れない一族 食人の痕跡と殺人タンパクの謎 ダニエル・T・マックス 柴田裕之訳 紀伊國屋書店 2007年 2400円 1765年に奇妙な病気で亡くなったヴェネツィアの医師の家系には、中年以降に発病する致死性の不眠症がある。数世紀に渡って一族を悩ましてきたが、…

Y氏の終わり

Y氏の終わり スカーレット・トマス 田中一江訳 早川書房 2007年 2000円 博士課程の研究テーマに関連した、“呪われた”本『Y氏の終わり』を書店で見つけた大学院生のアリエルは、その中に書かれていた飲み物のレシピを試してしまった。次々と他人の思考に入…

エピデミック

エピデミック 川端裕人 角川書店 2007年 1900円 バイオハザード物が好きだということもありますが、久しぶりにゾクゾクする面白さでした。川端裕人さんの作品は初めてですが、一日で読み終えてしまいました。科学的な記述が(たぶんネ)正確で、いわゆるバイ…

ベルリン1919

ベルリン1919 クラウス・コルドン 酒寄進一訳 理論社 2006年 2500円 1943年ベルリン生まれの作家コルドンの「転換期三部作」の一作目です。著者コルドン自身は東ドイツで成長したのち1973年西ドイツに亡命し(一度は逃亡に失敗して勾留されている)、その後…

完璧な赤 「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語

完璧な赤 「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語 エイミー・B・グリーンフィールド 佐藤桂訳 早川書房 2006年 2000円 コチニールという赤い色素は、今では食品添加物として使用される身近なものですが、16世紀にこの「完璧な赤」を独占的に扱ってい…

イスタンブール 思い出とこの町

イスタンブール 思い出とこの町 オルハン・パムク 和久井路子訳 藤原書店 2007年 3600円 トルコと言えば、トルコ石か、ナルニアでエドマンドが食べたTurkish Delightを連想し、行ったことはないけれど、イスタンブールと言えばトプカプ宮殿の美しいタイルし…

小説以外

小説以外 恩田陸 新潮社 2005年 1500円 読んだ作品は十指に満たず、私は恩田ファンとはいえませんが、物語が好きで好きでたまらないという恩田さんの気持ちが伝わってきてうれしくなりました。「物語作家の技法」を読んだ時と同じ気持ちです。紹介されている…

青いガーネットの秘密

青いガーネットの秘密 シャーロック・ホームズ”で語られなかった未知の宝石の正体 奥山康子 誠文堂新光社 2007年 1890円 「シャーロック・ホームズの冒険」にある「The Adventure of the Blue Carbuncle」は「青いガーネット」もしくは「青い紅玉」という邦…

ラナーク 四巻からなる伝記

ラナーク 四巻からなる伝記 アラスター・グレイ 森慎一郎訳 国書刊行会 2007年 3500円 『重力の虹』『百年の孤独』にならぶ20世紀最重要世界文学、ついに刊行! ダンテ+カフカ+ジョイス+オーウェル+ブレイク+キャロル+α… 奇才アラスター・グレイによる…

異邦人

異邦人 パトリシア・コーンウェル 相原真理子訳 講談社文庫 上下各800円 図書館利用を大原則にしたはずなのに、長年の習慣でスカーペッタシリーズの第15作「異邦人」を無意識に購入しました。無条件で購入する文庫本はこれ以外に「御宿かわせみ」だけです。…

高丘親王航海記

高丘親王航海記 澁澤龍彦 文春文庫 1990年 460円 航海記や漂流記と題した作品はいつも心躍る物語です。そしてこの本は澁澤龍彦氏の遺作である唯一の長編小説のようです。澁澤氏の翻訳や評論はほんの少し読んだだけで、小説があることは知りませんでした。な…

物語作家の技法 よみがえる子供時代

物語作家の技法 よみがえる子供時代 フェルナンド・サバテール 渡辺洋/橋本尚江訳 みすず書房 1992年 2800円 須賀敦子さんの書評に紹介されていた本です。しおり紐がページの真ん中に丸まって挟まっていました。誰にも読まれないまま、図書館の書庫に眠って…