香子(四) 帚木蓬生
PHP研究所 図書館本
『香子(三)』に続き、560頁の(四)にまた一週間以上かかった。
香子(紫式部)の物語は、中宮彰子の第一子・第二子(一条天皇の第二皇子・第三皇子)を出産して間もなく一条天皇が崩御し、彰子が皇太后となるまでの五年間が簡単に書かれている。三十六歳となった香子自身に大きな変化はないが、父為時が越後の国守となって、弟惟規が越後で客死している。
『源氏物語』は、「下若菜」から「総角」まで。厄年三十七歳の紫の上の具合が悪くなり、六条院に取り残された女三の宮は柏木との若君(のちの薫)を懐妊し、出産後に出家、柏木もなくなる。四十代後半となった光源氏は老年期と捉えられていて、物語の中心は息子の夕霧に移っている。紫の上が亡くなり、光源氏も出家を決意したところで「幻」の帖が終わる。さらに物語の中心は世代交代し、光源氏の息子である薫と、孫である匂宮の「宇治十帖」が始まった。
「柏木」「横笛」の帖は、苦しみと悲しみに満ちた物語となっている。不義の子として生まれた若君が育っていく可愛ささえ、痛ましいような気持になる。「憂し」という気分だ。
「幻」で出家を決意した源氏のその後は、「あえて書かなかった」と香子が語っているが、読者である女房達は登場人物に入れ込んで、出家した源氏のその後を巡って、二次創作のような物語を語り始めた所が、とても面白かった。
『源氏物語』の後半は登場人物の心情の表現が細かく、心の中を丁寧に描いているので、ストーリー展開が遅い。さらに、本名ではなく職名や呼び名しか書かれていないので、どこの誰だか混乱することが多い。「竹河」に出てくる玉鬘の子孫にあたる大君と中の君(長女と次女)と、宇治に住む八の宮の大君と中の君の区別がつかなくて、混乱してしまった。宇治十帖の前の「竹河」の出来があまりよくないと香子に言わせている。
自分の出生ゆえに内省的な薫と良いとこのお坊ちゃんである匂宮の、浮舟を廻る三角関係を描き切る『香子(五)』は、あと数日で発売されるらしい。図書館で借りられるのはもっと先だが、楽しみに待とう。